理系の大学生が日本のメーカーに入社する場合に配属される部署

工学部や理学部に進もうと思う受験生や所属しているにとって、企業の中の沢山の人間がどのようなことをやっているか、全くの未知だと思う。少なくとも私は知らなかった。というわけで今回は私が知っている限りの(理系の)大学生が製造業においてどの部署に進むことが出来るか、またその部署は一体何をやっているのか、あくまで私の印象であるが説明してみたい。

研究

 研究の立ち位置は多くの分野によってことなる。新しい薬を作る研究もあれば、新しいCPUを作る研究もあるだろう。しかし一般的には研究といえば10年以上先を見通した技術の探求が行われている。ここに行くことができるのは本当に優れた人材である。なにせ全く0のものから作り出すわけだから、それなりの能力が求められる。

しかも一般的に研究者は一生研究者であることが多い。研究者を辞めることができない、という意味ではなく、一度研究者をやめてしまうと復活することが厳しい、という意味だ。技術の発展は日進月歩であり、たゆまぬ努力が必要ということだと思う。

例えば時計を作る会社であれば全く新しい時計を作るための技術(例えば絶対に壊れない時計を作るための物質の発見)などがここに当たるだろうと思われる。

ある意味で会社の根幹となる部分であり給料も良い。残業が多いかどうかは会社による。しかし筆者の印象だが、研究、開発の方が残業が少なく、また休みも取りやすい。10年先の技術を作成しているため日程に多少の余裕があるためだ。

開発

開発とは4-5年先の技術を作成する部署である。基礎研究よりも長く、一部の企業では応用研究とも呼ばれる部署だ。4-5年先の技術ということで研究部門から設計部門までの橋渡しであるとも言える。研究部門で作成した使えそうな技術をさらにブラッシュアップし、製品化まで持っていく。その際最後の製品化の際には設計部門との連携が必要となってくる。

この開発、研究のテーマというのがどこからやってくるというと、自分で生み出すか、あるいは顧客からの要望(つまりは営業、設計部門からの要望)ということになる。

一般的に給料に関しては研究が最も多く次点で開発となる、研究>開発>設計という印象である。残業の少なさも同様。

設計

設計には上流設計と下流設計が別れている。

上流設計

設計という名前がついているもののほぼマネージャーであると思って間違いない。大企業になればなるほどこの傾向は顕著である。筆者の考えだが、恐らく本来は昔はこの部署の人間も下流工程まで行っていたのだろう。しかし業務の効率化を図った際、優秀な人間に下流設計をさせておくのはもったいない(というかお金がかかってしまう)ということでマネジメントのみをするようになってしまった。今時の新入社員でこのポストに着いた場合、直接的にプログラミングやCADを用いた設計をする機会は非常に少ないだろう。

ここの役割は企画部や顧客からの要望に対して仕様書を作成することであり、企画や顧客への説明をすることであり、下流設計者のマネジメントを行うことである。一般的に納期が短いため激務である場合が多い。

下流設計

実際にプログラムのコードやCADによる設計を行う部門である。上流設計同様に激務であることが多いが、顧客との直接的なやりとりは上流設計者がやってくれるためストレスは少ない、という印象である。

大企業になればこの下流工程は下請け会社などが行っている場合が多い。給料は大企業よりも低いものの、福利厚生、教育システムなどは同様のものを使用できることが多いため、「自分に大企業に入る能力はない」と考えているひとはこの大企業の子会社を狙ってみるのも良いだろう。

しかし「将来のスキルアップのために」と考えて入社するのはおすすめしない。大企業での実際の仕事は上流設計までであるからだ。

下記の二つの仕事も実際の設計はこの下流設計が行っている場合が多い。

製造・生産技術

筆者はこの部門については詳しく知らない。

イメージとしては「工場を作る部署」である。工場を自動化したり、物品の配置を変えたり、工場の労働者が働きやすいような環境を作ったりする。それにより製造コストを落とすことが目的だ。

筆者の知る限りではこの部門も結構激務である部門である。工場は一度止めると再稼働にお金がかかる場合が多く、24時間稼働する工場ではトラブルがあれば土日深夜であろうと呼び出される可能性がある、という印象がある。

品質管理

品質を管理する部署である、と言ったらそのままであるが、そのままである。

例えば時計であれば時計がどれほどの水圧、気圧、粉塵に耐えることが出来るかなどを確認、検査を行う。

また、顧客から製品異常に関する電話があった場合この部署に繋がる場合が多い。

会社によって異なる

以上説明したことは会社によって異なっている。研究という部署がなく開発という部署だけで10年先の技術を作成している会社もあるし、設計開発、という名前で設計を行っている会社も存在する。ここには書かなかったがもちろん実際に手を動かしてものを作る人もいる。

給与については研究>開発>上流設計=製造=品質管理>下流工程である場合が多い。しかし勘違いしてもらえないのはそれがその人間の価値ではないということだ。下流工程のような実務が面白いという人もいるだろう。よって下流設計、というのはあまり上品な言い方ではなく、右設計、左設計と言ったほうがよいと個人的には思う。

可能な限り自分がやりたいことを具体的にイメージし、志望動機の作成や日々の勉強のモチベーションにしてもらえると有り難い。

会社の調査をする。

会社によって色々と異なるため、実際的なことは社員の方に直接聞くのがベストだろう。口コミサイト(転職会議やvorkers)もその参考になる。もちろん口コミサイトは辞める社員が書いているためある程度のバイアスがかかっていることは否めない。しかし非常に良質な情報が書いて有る場合が多く、幾つかの社員の口コミを平均すればおおよその会社の全体像が見えてくるだろう。

月々1000円の登録が必要だが、仮に学部3年生から登録するとしても1万円ほどである。一生を大きく変える就職活動においてこれだけの金額は払ってもよいのではないか、と筆者は思う。